「Carving Wood spirits」ブルーカラーのアーティスト

樹木を伐採するチェンソーで彫刻を行うチェンソーアート。その表現には森で働く労働者たちのライフスタイルが色濃く反映されている。チェンソーアーティストの佐藤優則さんも、自然を愛し、仕事をエンジョイするそのライフスタイルを作品作りを通して表現している。【宮城県大河原町(取材:2016.07)】

復興を願う5基のチェンソーアート

東日本大震災の津波で大きな被害を受けた福島県相馬市の松川浦。この入り江に面する松川浦環境公園では、公園を管理するNPO法人「松川浦ふれあいサポート」の会員やボランティアの地道な作業により復旧と復興が進んできた。その象徴としてこの公園に立つ5基のモニュメント(そのうちの4基)は、大河原町に住むチェンソーアーティストの佐藤優則さんが、松川浦ふれあいサポートの依頼を受けて彫ったものだ。

「ふれあいサポートの会員さんたちと会ったとき、まず心打たれたね。この俺が涙でうるうるとなったんだから。腰が曲がったジジイたちが一生懸命泥で埋まった公園をきれいにしようとしている。一番の長老で90以上だからね、俺も作業員を抱えていてそいつらの給料を払うのも大事なんだけど、でもそれ以上にかけがえのないものをこの人たちは持ってるんだなと思ってさ」

津波の影響で枯れてしまった6本のヒマラヤスギをなんとか残したい。ふれあいサポートの会員たちの思いに触れ、居ても立っても居られなくなりすぐ佐藤さん。依頼を引き受け、その後公園の整備もボランティアでするようになった。こうと思うと一途に関わり、没頭する。同級生に「馬鹿」と言われるくらい、佐藤さんには裏表がない。

ブルーカラーの労働者の間で生まれたチェーンソーアート

チェンソーアートは、基本的には全ての彫刻をチェンソーで行う。作品の制作過程自体がパフォーマンスであり、多くの場合がイベントのデモンストレーションとして行われる。アメリカ北西部の山岳地帯ワイオミングの材木切り出し作業員が、仕事の合間に木片に自身の名前やメッセージを彫ったのが起源と言われ、その後多くのアーティストたちによる彫刻技術の深化とデモンストレーションを経て、芸術の一ジャンルとして定着した。

多くのチェーンソーアーティストと同様、佐藤さんもブルーカラーの労働者だ。現在、故郷である柴田郡大河原町で別荘地などの緑地管理やログハウス・ウッドデッキの施工などを行う会社を経営し、普段から仕事でチェンソーを扱っている。

元々は航空自衛隊で航空機の整備をしていた佐藤さん。結婚し子供も生まれて生活に不自由はなかったが、もっと自分らしい生き方があるのではないかという思いで航空自衛隊を辞め、道路管理の会社に勤める傍ら林業のアルバイトを始める。山に入って自然の中で仕事をすることに喜びを感じたという。

一度きりの人生、自分のスタイルで大いに楽しむ。

「青空の下、自然に囲まれて仕事するのは最高なんだ。でも林業もいろいろ方向性があってね。ただ木を切ってお金になればいいやという人もいるんだけど、俺がやりたいのはそれとは違かったから。山を美しくしたいというか、 地球温暖化が騒がれていた時期だったし何か地球のためになることができないかなと思ってる」

佐藤さんがこだわる彫刻のモチーフは、木の精霊「ウッドスピリッツ」だ。木の一本一本が生きてきた歴史を想像し、木の内面にあるものを彫りだす。
「でっかいの、いいべ!」
作品に込めた思いや意味を語る前に作品の大きさを嬉しそうにアピールする佐藤さん、一度きりの人生、自分のスタイルで大いに楽しみたいという。